国際連合(UN)

国連安全保障理事会室  cc Bernd Untiedt

1.国際連合はどんな活動をしているのですか?

1945年10月24日、第二次世界大戦の連合国が中心となって51カ国で発足した国際連合の加盟国の数も、2019年現在で193カ国に増加。現在加盟していない国・地域は、バチカン市国、コソボ共和国、クック諸島とニウエのみとなっています。このうち、バチカン市国は、自国の意志で加盟をしていない国、コソボ共和国、クック諸島とニウエは、諸処の事情で、まだ国家として認められていない国です。

 国連の目的は、平和と安全、経済、社会、文化などにまつわる国際問題を解決することにあります。早い話が、「国際問題なら何でもこい、とにかく集まって話し合いましょう」というわけです。国連にはそのために、全加盟国が1年に1回参加する国連総会が用意されています。国連ではさらに、取り扱う問題の種類によって二つの理事会が用意されています。一つは、経済、社会、文化などの幅広い国際問題を取り扱う、経済社会理事会。そして、一番重要かつ需要の高い、平和と安全の分野を丸抱えする安全保障理事会(以下安保理)です。

 さて、「国際問題なら何でもこい」と、理想は高い国連ではありますが、実際には第二次世界大戦以後起こった重大な国際問題の解決には、ほとんど貢献し得ていないのが現状です。第二次大戦後以後の世界は、米ソ超大国が他の国々を従えて、互いににらみ合いながら国際紛争を解決していった時期にあたり、米ソが国連を利用する意志がない限り、国連は無用の長物だったわけです。

 国際的な紛争の解決に取り組む安保理は、世界の平和と安全の維持を目標に掲げる国連の中枢の機関で、必要に応じて武力を行使できる権限や制裁措置を兼ね備えた点で、紛争解決の最有力手段として期待されましたが、発足当初から実際の紛争解決という問題に対しては骨抜きでした。それもそのはずです。安保理は米、英、仏、ソ連、中国の5カ国の常任理事国(任期無期限)と、任期が2年の非常任理事国10カ国の、合計15か国で構成されていますが、五つの常任理事国のうち1カ国でも反対すれば決議案は通りません。つまり、これら常任理事国は、自国に都合の悪い事項は、意のままに否決できるのです。常任理事国のみが持つこの権限を拒否権と言いますが、現在までに計270回余り行使されたこの拒否権によって、国連の平和と安全に関する活動のほとんどが封じられてきたといっても過言ではないでしょう。

 それなら、常任理事国以外の国で物事を決めればいいではないかと思うでしょうが、加盟国全体が参加する国連総会で決定された事項には、残念ながら拘束力がなく、決められた事項も実際の行動に反映されずに、そのまま放ったらかしという場合が非常に多いのです。さらに、経済と社会全般に渡る国際問題を取り扱うというふれこみの経済社会理事会も、肝心の世界銀行IMFなどが参加せず、それぞれ独自の活動をしているために効果が全然上がりません。さらに、近年国際的に注目を集めている地球規模の環境の問題にしても、政府以外の団体が国連に参加できないために、どうも盛り上がりに欠けると言った状況です。かくして、国連は、安全保障の分野以外では、極めて実効性のない「演説の場」になってしまったのです。

2.国連の活動資金はだれが払っているのですか?

 国連の資金は、すべて国連に加盟する193カ国によってまかなわれています。国連には通常予算と平和維持予算の、2種類の予算がありますが、加盟国は、これら2種類の予算を支払う義務があります。どの国がどのくらいの予算を分担するかは、各国の支払能力、国民所得および人口に基づいて、加盟国全体の合意で決定されます。これを国連分担金と呼びます。

 ただし、国連は決してお金持ちではありません。2020年度の国連の予算総額は、28億6千6百万ドルですが、これは、規模からすると、例えば東京都の予算7兆3540億円(2020年度)の4%程度に過ぎないのです。これで全世界の問題を解決していこうというのですから、相当無理な話ですね。

 これに加えて国連の財政難があります。これは、現在国連が最も頭を悩ませている問題なのですが、とにかく加盟国が分担金を払ってくれないのです。国連に対し、最も多くの分担金を支払うように期待されている上位7か国を7大拠出国と呼びます。1999年の7大拠出国は、米国(25%)、日本(19.984%)、ドイツ(9.808%)、フランス(6.540%)、イタリア(5.432%)、英国(5.090%)、およびカナダ(2.754%)で、この7か国で、国連通常予算の74%以上を占めていました。2020年度の分担率をみると、米国(22%)、中国(12.005%)、そして日本(8.564%)と、中国の占める割合が急上昇していますが、問題はこの分担金をまじめに支払っている国が少ないという点です。

累積した分担金の滞納額は、1999年時点で、すでに26億ドルを超えており、2019年にはついに2億3000万ドルの赤字を計上するまでになってしまいました。会社でいえば倒産の危機に瀕しているのが国連の現状です。

このうち、いちばん不真面目なのがアメリカで、加盟国の滞納額の半分はアメリカの滞納金といわれています。2018年にはアメリカのほかにも81カ国が完納しておらず、国連の財政難には決着が付きそうもありません。

つまり、国連は発足当初から、米ソ両大国が「利用する」場であったにすぎず、冷戦崩壊後は「利用さえされない」社交場として、見向きもされない存在になってきているという感じすらします。

3.日本の「常任理事国」入り問題が取り沙汰されていますが、常任理事国入りするとどのようなメリットがありますか?

 先にも述べましたが、国連の組織の中で、一番影響力があるのが安全保障理事会です。組織上では、全加盟国が参加する国連総会が中枢になっていますが、総会の決議は「勧告」であって、それ自体に拘束力はありません。つまり、「ぜひこうあってほしい」という希望に過ぎないわけです。力関係から言えば、国連総会が「生徒会」だとしますと、安保理は学校の方針を決定する「理事会」といったところです。安保理の決定事項は、自動的に加盟国すべてを拘束する決定事項であり、総会が安保理を拘束することはありえません。

 さて、これら安保理のメンバー15カ国中でも一番影響力があるのが5Pと呼ばれる常任理事国5か国、すなわちアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国です。先に述べたように、これら常任理事国は「拒否権」をもっており、5カ国のうち一つでも反対意見の出た案件は成立しない仕組みになっています。任期2年で交代する非常任理事国10カ国は、ただの「傍観者」にすぎないわけで、世界の安全にかかわる重要事項は、事実上すべてこれら常任理事国が決めることになるのです。これで、安保理の「常任理事国」が、いかに重要なポストであるか、おわかりいただけたかと思います。

 さて、日本が国連の常任理事国へ立候補するようになった、そもそものきっかけは、92年12月に採決された、安保理の見直しを促す決議です。これは、冷戦後の国際体制の変化により、国連活動への期待が高まる中、古い国連の体制を刷新しようことで提案されたものでしたが、93年12月には、安保理改組作業部会が設置され、安保理の改組を含むさまざまな提案をまとめる作業に入っています。安保理拡大案の一つとして、国連予算分担率の2位、3位をしめる日本とドイツの安保理入りが話題に上がったのもこの頃です。日本としては、国連の通常予算で、アメリカの25%に次ぐ12.45%を負担しているのに、それ相応の地位につけないのはおかしい、「金を出すなら口も出させろ」というわけです。

 しかし、現時点で懸念されているのは、安全保障理事会の常任理事国になれば、当然軍事行動を含めた、世界の安全保障を左右する重要な意志決定をすることになるわけですから、その点で、有事の法制が国際法の「常識」レベルに至っていない日本が、果たしてやって行けるのかという点です。例えば、湾岸戦争のような、軍事行動を伴う活動に対し、日本が常任理事国の一員として明確な態度を示せるか否か。また、国連平和維持活動PKO)に対する日本の姿勢は、はたして統一されているのか否かなど、日本側にも様々な疑問点が残ります。

 結局「金も口も出すが、手は出さない」のでは、日本が常任理事国に入る意味はないのでしょう。さらに、日本は世界の安全と平和の分野で貢献するよりも、経済や環境の分野で貢献するほうが、理にかなっているのではないかという意見もあがっています。ということで、常任理事国入りをどうこういう前に、むしろ日本国内で充分話し合って解決していかなければならない問題が山積しているというのが実状ではないでしょうか。

 結局97年度中の決定を目指していた、安全保障理事会の議席拡大の関しては、アメリカなどが一応の理解を示したものの、99年にはアジア、アフリカ、中南米三地域の代表も常任理事国に加えるべきであるという、マレーシアのラザリ国連大使の提案も加わって決着はつきませんでした。

 2003年にアナン事務総長が安保理改革の再開を提唱。2004年には2つの改革案が提示されますが、これも加盟国の合意を得ることができず頓挫したまま現在に至っています。

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