イスラエル国

緑の部分はパレスチナ  出典:外務省HP

 イスラエルは1948年に建国されたユダヤ人の国家ですが、イスラエル建国のために土地を追われたパレスチナ人が抵抗運動を開始して70年以上経過しています。イスラエルはパレスチナ問題がらみで4回にわたる大戦争を周辺アラブ諸国と戦い、レバノンに侵攻し、国内の抵抗運動(インティファーダ)をねじ伏せてきましたが、パレスチナ側との和平交渉は遅々として進んでいないのが現状です。ユダヤ人とは何か、建国の背景となったシオニズム運動とは何か、さらには中東和平の進展はどうかという点については、以下を参照してください。ここではイスラエルの外交関係と産業についてみていきます。

1.イスラエルとアメリカ、南アフリカの関係は?

 イスラエル建国当初から「特別な関係」を築いてきたのがアメリカです。アメリカはことあるごとにイスラエルを「中東における最も信頼できるパートナー」と表現しており、時には代弁者に、時には拒否権を使ってまでその主張を守り抜く姿勢を示しています。また実際の支援も膨大で、1981年に、エジプトと和平合意を締結してからは年間30億ドル規模の無償の軍事経済援助を行っています。2018年には10年間で380億ドルの軍事支援が確定しています。

 アメリカはどうしてこれほどまでにイスラエルに肩入れするのでしょうか?これには、アメリカ国内の事情があります。アメリカ国内のユダヤ人の人口は600万人から多く見積もっても700万人しかおらず、全人口に占める割合は1~2%程度です。意外と小さいのですが、アメリカにはアメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)と呼ばれるロビー団体があり、イスラエルに好意的な議員を支援したり、イスラエルに批判的な論調をタブー視する雰囲気を作ったりしながら、とても効果的にアメリカの国内政治に影響力を及ぼしているといわれています。トランプ大統領は、2017年、エルサレムをイスラエルの首都と認めるという声明を出し、国際的な係争点であるエルサレムの帰属問題に対してイスラエルに有利になるように働きかけ、実際にテルアビブにあった大使館をエルサレムに移設しています。また、シリアと争点になっているゴラン高原の一部に対してイスラエルの主権を認めるなど、かなりイスラエルに肩入れした政策をとっています。

 イスラエルのもう一つの友好国は南アフリカです。南アフリカはイスラエル建国以来の友好国ですが、特に南アフリカで生産されるダイヤモンドの加工が長年にわたってイスラエルの輸出総額の4分の一を占めています。南アフリカ発祥の独占的ダイヤモンド配給会社であるデビアスは、当初からロスチャイルド家などのユダヤ資本の支援を受けており、同じくユダヤ人が加工を手掛けるベルギーのアントワープ以外では優先的にイスラエルに供給を行ってきました。イスラエルはまた、南アフリカのシオニストの財政支援を長年にわたって受けています。また、イスラエルの核兵器開発に南アフリカが核実験場を提供していたとされる研究もあり、両国の結びつきはそれほど強固といえましょう。

2.イスラエルは核保有国なのですか?

 核保有に関してイスラエル政府は肯定も否定もしないというあいまいな対応に終始しています。しかしながら、以前核開発の現場で働いていたムルデハイ・ヴァヌヌ氏の内部告発や、ストックホルム国際平和研究所の調査などによる推計では、イスラエルは現在地上発射型ミサイル用の核弾頭50発、航空機搭載型の核弾頭30発、さらには現在所有する6隻の潜水艦搭載用の核が配備済みとされています。さらには正規級のプルトニウム900㎏を保有しているとされ、さらに200発以上の核弾頭を製造する能力があるとされています。

「全世界に同情されながら滅亡するより、全世界を敵に回して戦ってでも生き残る」ことがイスラエルの国是だそうです。「戦ってでも生き残る」ことに核兵器が使用されないことを願うばかりです。

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