アンゴラ共和国
出典:外務省HP
1.独立と米ソ対立
15世紀にコンゴ川河口地域に進出したポルトガルは、ルアンダ(現在のアンゴラの首都)を拠点として、主にブラジルやキューバ向けの奴隷貿易に従事。19世紀半ばまでに300万人の奴隷が中南米に渡りました。ヨーロッパのアフリカ分割会議として有名な1885年のベルリン会議では、アンゴラがポルトガルにあてがわれました。20世紀にはいると、アンゴラ内陸部でダイヤモンド鉱山が発見され、イギリス資本が参入します。
ポルトガルの支配に対する抵抗運動は第二次世界大戦後に表面化しますが、時代は冷戦の真っ只中です。解放運動は、ソ連とキューバの支援を受けて1956年に結成された社会主義系のアンゴラ解放人民運動(MPLA)と、アメリカや南アフリカが支援する形で62年に結成されたアンゴラ国民解放戦線(FNLA)、また66年にFNLAから分裂したアンゴラ全面独立国民連合(UNITA)の3派が、互いに覇権を争う形となりました。
長い間海外植民地を手放さなかったポルトガルでは、74年の軍事クーデターで政権が変わり、とうとう海外州の独立を認めることになりました。アンゴラでも75年の独立に向けて準備段階に入りましたが、独立後の政権の座をめぐって反共産系のFNLA・UNITA連合軍と社会主義系のMPLAとの間で内戦が勃発しますが、ソ連とキューバの支援を受けたMPLA軍が連合軍を破って、75年の11月にアンゴラ人民共和国の独立を宣言することになります。
もちろん、MPLA政権に反対する連合勢力はその後もゲリラ活動を続けますが、キューバ軍兵士の応援を得たMPLA側は圧倒的な軍事力で反政府ゲリラと戦い、76年には、ほぼ内戦状態が終結したかに見えました。ところが、反共産主義のFNLAはザイール政府(コンゴ民主共和国の前身)の支援を受け復活。MPLAはそれに対抗してアンゴラに潜伏中の反ザイール政府組織を支援して77年にザイールを侵攻するなどして、アンゴラとザイールの関係は一時期極度に緊張しました。しかし、78年にはネト大統領がザイールを公式訪問して外交関係を復活したため,ザイールの支援を失ったFNLAは崩壊。代わってUNITAが反共産主義組織組織をまとめてMPLAと対峙するようになります。
2.アメリカの介入
そんなUNITAに朗報がやってきます。81年に誕生したアメリカのレーガン政権は、公然とUNITAに対する支援を表明。9月にはUNITA の後ろ盾だった南アフリカ共和国軍が大挙してアンゴラを侵攻します。82年にはさらに、アンゴラに駐留するキューバ兵5万人の撤退をナミビア独立の条件とする政策を打ち出しアンゴラ政府に圧力をかけますが、MPLA政権はその要求を退け、交渉は暗礁に乗り上げます。
結局、南アフリカ共和国軍のアンゴラ南部からの撤退は88年にまでずれ込み、同年12月に、南アフリカ共和国が社会主義のナミビアの独立を承認するのと引き換えにアンゴラからキューバ兵が撤退するという合意が形成されました。キューバ兵の撤退により、和平の道を模索し出したMPLAは、91年にUNITA側とアンゴラ包括和平協定(エストリル交換公文)を締結。ここに独立以来続いた内戦は終結したかに見えました。
アンゴラの内戦終結を受けて、国連安保理は、停戦、武装解除、総選挙を監視するために第二次国連検証団(UNVEMII)を派遣。92年8月には新憲法が制定され、それに基づいて9月に大統領および国政選挙が実施されました。選挙の結果、MPLAのドス・サントス大統領が当選。国政選挙でもMPLAが過半数を得ることになりましたが、憲法制定作業に参加しなかったUNITAは、選挙に不正があったとして首都ルアンダを攻撃。戦闘は内陸部に拡大してアンゴラは再び内戦に突入します。
対立両者は94年、国連の仲介で和平協定を締結。95年には第三次国連検証団(UNVEMIII)が展開。97年には国連アンゴラ監視団(MONUA)の支援によって和平プロセスが進められ、念願の国民和解統合政府が成立します。
しかし、UNITAの武装解除は著しく遅れ、対立諸派による合同国軍の新設もままならないような状況のもとで、98年夏に再び内戦が勃発。さらに98年、99年と国連の輸送機が撃墜される事件が立て続けに起こり、国連はアンゴラ政府との連絡事務所「国連アンゴラ事務所(UNOA)」を残して国連アンゴラ監視団(MONUA)を撤退させます。
内戦はその後も続けられ、2000年、戦闘は政府軍に有利な形で展開。2002年2月のザヴィンビUNITA議長の戦死後は、和平機運が高まり、4月停戦合意がなされ、独立以来27年にわたった内戦は、事実上終結しました。
アンゴラにはダイヤモンド資源とナイジェリアに次ぐ産出量を誇る豊富な石油資源があり、それらを背景に現在急激な経済成長を遂げていますが、ダイヤモンド鉱山は、UNITA側の資金源で、石油資源はMPLA側の資金源となっており、戦闘継続に必要な資金には事欠かない状況ですから、双方の対立が勃発すれば、いつ内戦が再発してもおかしくはありません。